第2章
第二章 Save → Plan → Impulse
SNSが明かした人の移動の構造
2-1 三つのプラットフォームの役割
実験の結果、三つのプラットフォームには明確な役割分担が存在することがわかった。
Instagramでは、人は保存する。
コメント欄に頻繁に現れた言葉は「保存した」「絶対行きたい」「雰囲気最高」だった。感情的な共鳴と、後で見返すための保存行動が、Instagramの主要な反応だった。
YouTubeでは、人は計画する。
「ここから車で何分ですか」「次の旅行で那須に寄るルートを組んでいます」「駐車場はありますか」。YouTubeのコメントは、具体的な計画や評価の言葉に満ちていた。
TikTokでは、人は衝動を受ける。
「今から向かいます」「さっき行ってきた!動画で見て衝動的に来た」。TikTokの特徴は、投稿からの時間的近接性だった。動画を見た当日・翌日に来店したという報告が、他のプラットフォームより顕著に多かった。
2-2 統計的な検証
この分布の差は、統計的に有意だった。
χ²(4, N=468) = 168.15, p < .001, Cramér's V = 0.42(中〜大の効果量)。
二者間信頼性はCohen's κ = 0.82(強い一致)。Bonferroni補正済みの事後比較でも、三プラットフォーム間の全ての組み合わせで有意差が確認された(p < .001)。
2-3 Save → Plan → Impulse という構造
私はこの観察を、Save → Plan → Impulse という三段階の行動経路として整理した。これは個々のユーザーが必ずこの順番で三つのプラットフォームを行き来するという主張ではない。プラットフォームレベルで見たとき、各プラットフォームが異なる行動段階を主に支持しているという、分布の差についての知見である。
この構造は、那須という車依存の地方観光地の特性と深く関係している。店舗間距離が3〜8kmという地理的条件は、観光客の「計画」コストを高める。だからこそ、「保存する」「計画する」「衝動で動く」という行動の差が、プラットフォームの差として鮮明に現れた可能性がある。