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第5章

第五章 地域全体が世界観を形成する

競争しながら紹介し合う構造

5-1 非競争的協調という観察

那須での最も重要な観察の一つが、店舗間の非競争的な協調関係である。あるカフェの店主が、別のカフェを「ぜひ行ってみてください」と紹介した。パン屋が、地域の他の食事処を勧めた。100店舗を超えるフィールドワークを通して、これが那須全体に広がる文化であることが見えてきた。

5-2 地域全体が一つの世界観を形成する

那須という地域は、店単位ではなく、地域全体で一つの世界観を形成しているのではないか。

那須の世界観を一言で表すなら、おそらく「ゆっくりした時間の中に、個性的な場所が点在している」になるだろう。この世界観は、特定の誰かが設計したものではない。百を超える個人店が、それぞれ独立して経営しながら、結果として作り上げてきたものである。

5-3 デジタルと現実の相互作用

Instagramでの「保存」は、那須の世界観の断片を自分のコレクションに加える行為である。YouTubeでの「計画」は、その世界観の中をどう移動するかを事前に想像する行為である。TikTokでの「衝動」は、世界観に引き寄せられて、現実の移動を決断する瞬間である。

デジタルメディアは、観光記憶圏の世界観を遠方の人々に届け、来訪を促す媒体として機能している。そして来訪した人が持ち帰る記憶が、再びデジタルメディアを通して拡散していく。