第8章
第8章 現場で使える動画パターン —— 何を撮ればいいのか
SNS動画を始めようとすると、多くのお店が最初に止まります。
「何を撮ればいいかわからない」が、最初の壁になる
SNS動画を始めようとすると、多くのお店が最初に止まります。
何を撮ればいいのかわからない。
毎日そんなにネタがない。
自分の店は特別ではない。
映える商品がない。
顔を出すのは恥ずかしい。
忙しくて考える時間がない。
これは、非常によくわかります。
私自身も、なすぱらTVを始めた当初、毎回きれいに設計できていたわけではありません。
むしろ、撮りながら迷っていました。
この場所の何を撮れば伝わるのか。
このお店の良さは、どこにあるのか。
料理なのか。
人なのか。
空間なのか。
地域なのか。
それとも、まだ言葉になっていない何かなのか。
その迷いの中で、何百本も作り続けるうちに、少しずつパターンが見えてきました。
それが、黄金の7パターンであり、さらに細かく整理した16パターンです。
ここで大事なのは、パターンを暗記することではありません。
自分のお店の中に、すでにある魅力を見つけるための視点として使うことです。
黄金の7パターン
まず、現場で使いやすいのは7パターンです。
1. 商品・メニュー紹介型 2. 居心地・雰囲気型 3. 店主・スタッフの人物型 4. 仕込み・舞台裏型 5. 地域・風景・文化型 6. 共感・挑戦型 7. テロップ・無言型
これだけで、ほとんどのお店は動画を作れます。
しかも、この7つは単なるネタ帳ではありません。
それぞれが、違う感情を動かします。
商品・メニュー紹介型は、「食べたい」「試したい」を作ります。
居心地・雰囲気型は、「ここにいたい」「落ち着きそう」を作ります。
店主・スタッフの人物型は、「この人のお店なら行ってみたい」を作ります。
仕込み・舞台裏型は、「ちゃんと作っている」「信頼できる」を作ります。
地域・風景・文化型は、「この場所に行きたい」を作ります。
共感・挑戦型は、「応援したい」を作ります。
テロップ・無言型は、「気軽に見られる」「保存しやすい」を作ります。
つまり、動画パターンとは、感情パターンでもあります。
何を撮るかは、何を感じてもらいたいかで決まります。
1. 商品・メニュー紹介型
もっともわかりやすいのが、商品・メニュー紹介型です。
カフェなら、コーヒー、ケーキ、ランチ、パスタ、季節メニュー。
美容室なら、カット、カラー、パーマ、トリートメント。
整体なら、施術メニュー、姿勢改善、肩こり対策。
歯科医院なら、ホワイトニング、クリーニング、予防歯科。
この型は、最初に取り組みやすい。
ただし、注意点があります。
単なる商品説明にしてはいけません。
「本日のランチです」
「新メニューです」
「ぜひ来てください」
これだけでは弱い。
大事なのは、その商品がどんな気分を作るかです。
たとえばカフェなら、
雨の日に食べたくなるケーキ。
仕事を終えた夕方に飲みたいコーヒー。
那須に来たら一度は食べたいランチ。
子どもと分けやすいプレート。
ひとりで静かに食べられる焼き菓子。
こう書くと、商品が単なる物ではなく、時間になります。
人はメニュー名だけで動くのではありません。
その商品がある時間を想像して動きます。
商品紹介型で撮るべきなのは、商品そのものだけではなく、商品が生む時間です。
2. 居心地・雰囲気型
なすぱらTVで非常に重要だと感じたのが、居心地・雰囲気型です。
これは、バズを狙う動画ではありません。
派手な展開もない。
強いオチもない。
しかし、保存される。
なぜか気になる。
何度も見てしまう。
この型で撮るのは、空気です。
窓から入る光。
テーブルの質感。
椅子の距離感。
店内の静けさ。
小さな音。
外の緑。
湯気。
夕方の影。
人の少ない時間。
こういうものは、AIでいくらでも文章化できます。
でも、その店に実際に流れている空気は、現場で撮るしかありません。
そして、AI時代には、この「現場でしか撮れない空気」が価値になります。
居心地・雰囲気型は、Instagramと非常に相性がいい。
保存されやすい。
世界観が伝わりやすい。
「いつか行きたい」という感情になりやすい。
ただし、撮る側が焦ると壊れます。
早く動かしすぎない。
テロップを入れすぎない。
説明しすぎない。
間を残す。
沈黙を怖がらない。
これが大切です。
3. 店主・スタッフの人物型
小さなお店にとって、人物は最大の資産です。
大企業は、ブランド名で信頼されます。
チェーン店は、標準化で安心されます。
しかし、小さなお店は「誰がやっているか」が大きい。
店主の表情。
スタッフの声。
手元。
一言。
立ち方。
お客様への距離感。
これらが、店の印象を作ります。
ただし、人物型は、無理に顔出しをする必要はありません。
顔が苦手なら、手元でいい。
声だけでもいい。
後ろ姿でもいい。
作業風景でもいい。
大切なのは、「人がいる」と伝わることです。
AI時代には、ここが非常に重要になります。
AIが作った文章。
AIが作った画像。
AIが作った広告。
それらが増えれば増えるほど、人は本物の人間の気配に反応します。
手で作っている。
考えている。
悩んでいる。
工夫している。
続けている。
そういう人間の気配が、小さなお店の信頼になります。
店主・スタッフの人物型は、ファン動画の中心です。
4. 仕込み・舞台裏型
仕込みや舞台裏は、非常に強い動画素材です。
なぜなら、普段お客様が見られないからです。
開店前の準備。
野菜を切る。
生地をこねる。
スープを仕込む。
掃除をする。
花を飾る。
メニュー表を書き換える。
椅子を整える。
レジを開ける。
こうした場面は、派手ではありません。
しかし、店の誠実さが出ます。
私がとても大事だと思うのは、仕込み動画には「売る前の時間」が映ることです。
お客様が来る前に、どれだけ準備しているか。
見えないところで、どれだけ整えているか。
そこに、お店の姿勢が出る。
これは口コミでは伝わりにくい。
広告でも伝わりにくい。
でも動画なら伝わります。
仕込み・舞台裏型は、信頼を作ります。
YouTubeにも向いています。
Instagramにも向いています。
TikTokでも、短く切れば強い。
特に手元の動き、音、リズムは、短尺動画と相性がいい。
5. 地域・風景・文化型
地方のお店にとって、地域は背景ではありません。
商品そのものの一部です。
那須の店は、那須の光の中にあります。
那須の道の中にあります。
那須の季節の中にあります。
那須に向かう気持ちの中にあります。
この地域性を切り離して、お店だけを撮ると、魅力が弱くなることがあります。
都市部の店舗なら、駅近、価格、便利さが強いかもしれません。
しかし地方店の場合、
道中。
山。
空。
畑。
林。
雪。
朝の光。
夕方の道路。
季節の変化。
こうしたものがお店の価値とつながっています。
地域・風景・文化型は、「この場所に行きたい」という感情を作ります。
お店だけではなく、地域全体への来訪意欲を作る。
なすぱらTVで見えてきたのは、地域SNS動画は一店舗だけの宣伝ではなく、地域全体の記憶を作るということでした。
ある店の動画を見て、那須に行きたくなる。
那須に行く予定ができて、別の店も候補に入る。
複数の店が、地域の世界観を支える。
これは地方にとって非常に大きい。
地域性は、AI時代における小さなお店の強い武器です。
6. 共感・挑戦型
共感・挑戦型は、店主の物語を伝える動画です。
なぜこの店を始めたのか。
なぜこの地域で続けているのか。
何に悩んでいるのか。
何を変えたいのか。
どんなお客様に来てほしいのか。
どんな失敗があったのか。
何を大切にしているのか。
こうした内容は、少し勇気がいります。
しかし、小さなお店にはとても向いています。
なぜなら、人は完璧な店よりも、応援したくなる店に心を動かされるからです。
ただし、苦労話を過剰に演出する必要はありません。
泣かせようとしなくていい。
ドラマチックにしなくていい。
むしろ、淡々とした本音の方が伝わることがあります。
「この地域で続けたい」
「子ども連れでも安心できる場所にしたい」
「観光の人にも地元の人にも来てほしい」
「派手ではないけれど、毎日ちゃんと作りたい」
こうした言葉で十分です。
共感・挑戦型は、お店を単なる消費対象から、応援対象へ変えます。
7. テロップ・無言型
最後に、テロップ・無言型です。
これは初心者に非常に向いています。
話さなくていい。
顔を出さなくていい。
長い説明をしなくていい。
映像に短いテロップを重ねるだけで成立します。
たとえば、
「那須で、ひとりでも入りやすいカフェ」
「雨の日に行きたい静かな席」
「初めての方におすすめのランチ」
「駐車場が広くて安心」
「子ども連れでも過ごしやすい理由」
「朝の仕込み、今日はここから」
この程度で十分です。
無言型の良さは、見る人が自分の気持ちを入れやすいことです。
説明しすぎないから、想像できる。
音を出さなくても見られる。
保存しやすい。
移動中にも見やすい。
Instagram、TikTok、YouTube Shortsのどれにも使えます。
SNS動画を始めるなら、まずテロップ・無言型からでいい。
最初から話そうとしなくていい。
最初から完璧に編集しようとしなくていい。
まず、店の中にある静かな魅力を15秒で切り取る。
そこから始めればいいのです。
16パターンは、細分化のために使う
7パターンに慣れてきたら、16パターンに広げます。
これは、毎回まったく新しい企画を考えるためではありません。
同じ店の魅力を、違う角度から撮るためです。
たとえば、
グルメ・商品紹介型。
居心地よさ・雰囲気型。
店主・スタッフの人物・物語型。
個人の挑戦・共感型。
街・地域の風景・文化型。
ビフォー・アフター・経過型。
テロップ系。
比較・Q&A型。
季節・トレンド型。
地域住民の日常利用型。
地域貢献・未来共創型。
インバウンド・多言語利便性型。
インバウンド・文化体験特化型。
UGC創出・ユーザー巻き込み型。
意思決定支援・不安解消型。
進捗感・緊急性訴求型。
さらに、重複視聴・コアファン育成型。
こうして並べると難しく見えます。
しかし、考え方は単純です。
同じ店を、商品として見る。
空間として見る。
人として見る。
地域として見る。
不安解消として見る。
応援対象として見る。
未来の旅行先として見る。
この視点を増やすために、16パターンを使うのです。
一週間の撮影例
現場で使いやすいように、一週間の例を出します。
カフェの場合です。
月曜日 仕込み・舞台裏型 朝の準備、豆を挽く音、開店前の店内 火曜日 商品・メニュー紹介型 人気ランチ、季節のケーキ、今日のおすすめ 水曜日 居心地・雰囲気型 窓際の席、雨の日、静かな午後 木曜日 Q&A・不安解消型 駐車場、子ども連れ、予約、混雑時間 金曜日 店主・スタッフ人物型 手元、ひと言、こだわり、準備の様子 土曜日 TikTok向け入口動画 一瞬で伝わる料理の動き、湯気、音 日曜日 地域・風景・文化型 那須の風景、周辺スポット、帰り道
これを毎週完璧にやる必要はありません。
むしろ、全部できなくていい。
ただ、曜日ごとに型を決めておくと、迷いが減ります。
迷いが減ると、続けやすくなります。
SNS動画で大切なのは、才能よりも継続です。
そして継続するためには、毎回ゼロから考えないことです。
撮影で一番大事なのは、特別な瞬間ではない
多くのお店は、「特別なことがないと投稿できない」と思っています。
新メニューが出たら投稿する。
イベントがあったら投稿する。
キャンペーンがあったら投稿する。
もちろん、それも大切です。
しかし、ファン動画で重要なのは、特別な瞬間だけではありません。
むしろ、日常です。
毎日開店していること。
同じように仕込んでいること。
掃除していること。
お客様を迎えていること。
季節に合わせて少し変えていること。
これらが、店の信頼を作ります。
AI時代には、派手な宣伝文は誰でも作れます。
でも、毎日の現場はその店にしかありません。
だから、日常を撮る。
いつもの席を撮る。
いつもの仕込みを撮る。
いつもの声を撮る。
これが、いちばん強い一次情報になります。
この章の結論
何を撮ればいいかわからないときは、黄金の7パターンから始めればいい。
商品。
空気。
人。
仕込み。
地域。
共感。
テロップ。
この七つだけで、小さなお店のSNS動画は十分に始められます。
慣れてきたら、16パターンに広げればいい。
大事なのは、AIでも作れる一般論ではなく、その店にしかない現場を撮ることです。
お店の中には、すでに素材があります。
ただ、まだ見つけられていないだけです。
SNS動画とは、店の中に眠っている感性を、少しずつ外に出していく作業なのです。