BEST PAPER AWARD · HCII 2026
HCII 2026 / SPRINGER LNCS
那須から始まったSNS観光研究が、
国際学会HCII 2026へ。
株式会社エックスブレーンズが運営するKansei Research Projectによる本研究は、カナダ・モントリオールで開催されたHCI International 2026においてBest Paper Awardを受賞しました。
Instagramは「保存」、YouTubeは「計画」、TikTokは「衝動」。
60日間・468本の動画観測から、SNSが旅行者の意思決定に果たす異なる役割を明らかにしました。
栃木県那須地域をフィールドとして行ったSNS動画研究「Save → Plan → Impulse」が、国際会議HCI International 2026に採択され、SpringerのLecture Notes in Computer Scienceに掲載されました。
PUBLICATION INFORMATION
論文掲載情報
本研究は、栃木県那須地域における短尺SNS動画の実践と行動観測をもとに、プラットフォームごとに異なる観光意思決定上の役割を分析したものです。
- 論文タイトル
- Save → Plan → Impulse:
A Cross-Platform Sequential Model of Short-Form Video Influence on Tourist Mobility in Car-Centric Rural Regions - 著者
- Mitsuhiko Fujii
藤井 実彦 - 国際会議
- HCI International 2026
- 出版
- Springer Nature
Lecture Notes in Computer Science, Volume 16715 - 発表日時
- 2026年7月31日
16:00–18:00 EDT / Session S334
WHAT WE FOUND
SNSは、すべて同じように
人を動かすわけではありません。
同じ場所を紹介する動画でも、投稿するプラットフォームによって、視聴者が示す反応には違いがありました。本研究では、その違いをSave、Plan、Impulseという三つの行動段階として整理しました。
SAVE
保存する
「いつか行きたい」「次の旅行の候補にしたい」
場所を未来の訪問候補として記憶に残す役割を強く示しました。
YouTube
PLAN
計画する
「場所はどこですか」「営業時間を知りたい」「家族と行ってみたい」
詳しい情報を確認し、比較し、具体的な訪問を計画する役割を強く示しました。
TikTok
IMPULSE
衝動が生まれる
「今すぐ行きたい」「今日行ってみよう」「ここ、気になる」
短時間で感情を動かし、即時的な関心や訪問衝動を生む役割を強く示しました。
本研究は、各プラットフォームの利用者全員が必ず同じ行動を取ると主張するものではありません。那須地域で投稿した動画への反応を行動意図として分類し、統計的な傾向の違いが観測されたことを示しています。
WHY NASU?
なぜ、那須だったのか。
那須は、鉄道駅や観光施設の周辺だけで観光行動が完結する地域ではありません。魅力的な店舗、宿泊施設、自然、文化施設が広い地域に点在し、多くの旅行者が自動車で移動します。
動画を見た人は、その場ですぐに訪問できるとは限りません。一度保存し、場所や営業時間を調べ、家族や同行者と相談し、天候、距離、移動時間を考えてから訪れます。
那須は、この研究の背景ではありません。
人が場所を知り、記憶し、計画し、実際に移動するまでを観測するための、重要な研究フィールドでした。
FIELD DATA
現場から得られた一次データ
観測期間
分析対象動画
総インプレッション
Instagram / YouTube / TikTok
分類者間一致度
プラットフォームと行動分類の関連
χ² = 168.15p < .001 / Cramér’s V = 0.42動画の再生数だけでは、人が実際にどのような意思を持ったのかは分かりません。本研究では視聴者コメントを読み、保存、比較検討、訪問計画、即時的な訪問意欲など、行動につながる表現を分類しました。その結果、三つのプラットフォームで行動意図の分布に明確な違いが確認されました。
FROM PRACTICE TO RESEARCH
一つの地域活動が、
国際研究になるまで。
この研究は、研究室の中から始まったものではありません。那須で魅力的な店舗や場所を訪ね、その価値が十分に伝わっていないことに気づいたことが、すべての出発点でした。
- 01
那須の店舗と場所を取材
料理、店主、空間、風景など、まだ十分に知られていない地域の魅力を取材しました。
- 02
「なすぱらTV」を開始
YouTube、Instagram、TikTokを横断し、地域の店舗や場所を短い動画で発信しました。
- 03
視聴者反応の違いを発見
同じ素材でも、プラットフォームによってコメントや反応が違うことに気づきました。
- 04
25日、44日、60日の段階的観測
活動を一度限りの事例で終わらせず、期間ごとにデータを整理し、8本の調査レポートとして記録しました。
- 05
Save → Plan → Impulseモデルを構築
Instagram、YouTube、TikTokの違いを、旅行意思決定の連続した段階として整理しました。
- 06
書籍と英語版を出版
研究過程と関連概念を、日本語・英語の書籍として体系化しました。
- 07
HCII 2026採択・Springer掲載
フィールドから得た知見を学術論文として提出し、国際会議での査読を経て採択されました。
RESEARCH BACKGROUND
この論文は、一本だけで
突然生まれたものではありません。
背景には、那須でのフィールドワーク、SNS動画の制作と観測、8本の調査レポート、日本語・英語13冊の関連出版があります。現場で生まれた疑問を記録し、言葉にし、構造化し、次の観測へつなげる継続的な研究アーカイブです。
AI時代に、人は何に心を動かされ、
どのように意思決定し、実際の行動へ移るのか。
CONCEPTUAL FRAMEWORK
Kansei Resonance
感性共鳴という解釈
なぜ、同じ場所を紹介する動画でも、プラットフォームによって異なる反応が生まれるのでしょうか。
本研究では、その違いを単にアルゴリズムや動画尺だけの問題としてではなく、視聴する人、動画の表現、プラットフォームの文化と機能、訪問先となる地域の条件が重なり合った結果として捉えています。
FOR REGIONAL TOURISM
地方観光のSNS発信を、
「同じ動画の横流し」で終わらせない。
プラットフォームが旅行者の意思決定の異なる段階を支えているなら、発信の目的も変える必要があります。
未来の訪問候補として残してもらう
写真や短い映像で店や場所の印象を記憶に残し、後から見つけ直せる状態をつくる。
訪問前の不安を解消する
場所、メニュー、価格、駐車場、店内の様子、店主の考えなどを伝え、比較検討と計画を支える。
偶然の発見を生む
料理の瞬間、驚き、風景、人物など、短時間で感情を動かす入口をつくる。
本研究は、特定のSNSに優劣を付けるものではありません。それぞれの特性を理解し、地域や店舗の目的に応じて組み合わせて活用することを提案しています。
FROM RESEARCH TO PRACTICE
研究成果を、
地域店舗が使える形へ。
株式会社エックスブレーンズでは、Save → Plan → Impulse、世界観設計、観光記憶、GEOなどの知見をもとに、店舗診断、SNS動画制作、地域情報設計、Google Maps・AI検索への対応などを実践しています。
FUTURE WORK
次に確かめなければならないこと。
今回の研究は、那須地域におけるSNSコメントの行動分類に基づくものです。実際の来訪者数、位置情報、予約、購買、訪問後の再訪行動までを直接追跡した研究ではありません。
今後は地域、季節、業種、動画表現を広げながら、オンライン上の反応と実際の観光移動との関係を検証する必要があります。
- 01実際の来訪行動との接続
- 02複数地域での再検証
- 03店舗業種別の比較
- 04動画表現と行動段階の関係
- 05保存から訪問までの時間差
- 06AIによる個別最適化
- 07地域店舗が自走できる動画支援
本研究は、最終的な答えではありません。地方観光において、SNSが人の記憶、計画、移動をどのようにつないでいるのかを考えるための、最初の実証的な一歩です。
RESEARCHER
藤井 実彦
Mitsuhiko Fujii
青山学院大学文学部教育学科心理学専攻卒。WEBマーケティングコンサルタントとして20年以上にわたり、人がどの瞬間に納得し、行動へ移るのかを研究・実践してきました。
漫画、WEB、SNS動画、地域フィールドワーク、AIを横断し、複雑な情報や目に見えにくい価値を、人が理解し行動できる構造へ翻訳することを専門としています。
詳しいプロフィールを見る →MEDIA & CONTACT
取材・講演・共同研究について
本研究、HCII 2026での発表、那須地域におけるSNS観光研究、地方店舗の情報発信、Save → Plan → Impulseモデルに関する取材・講演・共同研究のご相談を受け付けています。
- 新聞・テレビ・WEBメディアの取材
- 自治体・観光協会向け説明
- 研究者・大学との共同研究
- 地域事業者向け講演
- SNS・AI・地域DXに関する講演
- 研究データ・図版の確認