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第3章

第3章|日本のSEOはなぜ誤解されやすかったのか

日本のSEOは、少し独特な道をたどってきました。もちろん、日本にも優れたSEO専門家はたくさんいます。しかし一方で、日本の中小企業の現場では、SEOが長い間「順位を上げる作業」として理解されすぎてきた面があります。

日本のSEOは、少し独特な道をたどってきました。もちろん、日本にも優れたSEO専門家はたくさんいます。しかし一方で、日本の中小企業の現場では、SEOが長い間「順位を上げる作業」として理解されすぎてきた面があります。

「SEO対策込みのホームページ制作」「地域名+業種名で上位表示」「毎月ブログを書けば集客できます」「外部リンクを増やせば順位が上がります」「AIで記事を量産すればアクセスが増えます」。こうした言葉は、Web制作や集客の現場で長く使われてきました。

問題は、それらが目的化してしまったことです。本来、SEOの目的は順位そのものではありません。検索している人に見つけてもらい、必要な情報を届け、信頼してもらい、問い合わせや来店や購入につなげることです。しかし現場では、しばしば途中の指標だけが目的になりました。

Yahoo! JAPANという入口

日本のインターネットの歴史を考えるうえで、Yahoo! JAPANの存在は非常に大きいものです。かつて多くの人にとって、インターネットの入口はYahoo! JAPANでした。ニュースを見る。天気を見る。メールを使う。オークションを見る。路線を調べる。検索する。地域情報を見る。Yahoo! JAPANは、単なる検索エンジンではなく、生活ポータルでした。

このことは、日本のWeb集客の感覚にも影響しています。検索するというより、ポータルから入る。カテゴリから探す。大きな入口に掲載される。有名な媒体に載る。人が集まる場所に出る。この感覚は、後のグルメサイト、美容ポータル、求人媒体、住宅情報サイトにもつながっています。

地域名+業種名SEOの時代

日本の中小企業SEOで非常に多かったのが、「地域名+業種名」のSEOです。「宇都宮 歯科」「那須 カフェ」「小山 美容室」「栃木 工務店」「大田原 整体」。こうしたキーワードで上位表示を狙う。これは、決して間違いではありません。地域ビジネスにおいて、地域名と業種名は非常に重要です。

しかし問題は、この考え方が単純化されすぎたことです。地域名を入れればよい。業種名を入れればよい。タイトルにキーワードを詰めればよい。対応エリアページを大量に作ればよい。市区町村名を並べればよい。このような施策が広がった時期がありました。

制作会社とSEO会社の分断

日本の中小企業の現場では、ホームページ制作会社とSEO会社の役割が分かれていることも多くありました。制作会社は、デザインとサイト制作を担当する。SEO会社は、検索順位や記事作成を担当する。広告会社は、リスティング広告を担当する。SNS代行会社は、InstagramやXを担当する。Googleビジネスプロフィールは、別の担当者が管理する。

それぞれに専門性があります。しかし、分断されると問題が起きます。サイトはきれいだが、検索に弱い。記事は増えているが、サービスページへの導線が弱い。広告は出ているが、ランディングページの内容が薄い。SNSでは雰囲気が伝わるが、公式サイトとつながっていない。Google Mapsには口コミがあるが、サイトには反映されていない。

GEO時代には、この分断はさらに大きな弱点になります。なぜならAIは、バラバラの情報を横断的に見ようとするからです。

中小企業には一次情報が眠っている

日本の中小企業や地域店舗には、実は強い情報資産があります。長年の経験。顧客との会話。現場での失敗と改善。地域での信頼。職人の技術。店主のこだわり。スタッフの対応。お客様からよく聞かれる質問。競合にはない工夫。リピートされる理由。

これらは、SEOやGEOにおいて非常に重要な一次情報です。しかし、多くの場合、それがWebに書かれていません。「うちは昔からこうやっている」「お客様にはいつも説明している」「来てもらえればわかる」「口コミで広がっている」「常連さんは知っている」。こうした言葉は、とても日本的です。しかし、初めて検索する人には伝わりません。AIにも伝わりません。

ホットペッパー型集客の功罪

美容室やエステサロン、整体、飲食店などでは、ポータル媒体への依存が長く続いてきました。特にホットペッパー系の媒体は、多くの店舗にとって大きな集客源でした。新規客を獲得できる。予約が入りやすい。口コミが集まる。メニューも見せやすい。

しかし同時に、店舗は媒体内の比較競争に巻き込まれます。初回クーポン。割引価格。写真の見せ方。口コミ点数。掲載順位。予約枠の空き。ユーザーにとって便利な比較は、店舗にとっては価格競争や見た目競争にもなります。

食べログと口コミ文化

飲食店でも同じことが起きてきました。かつては、雑誌やテレビ、地域情報誌が飲食店を紹介していました。その後、食べログ、ぐるなび、Retty、Google Mapsなどが、飲食店選びの重要な入口になりました。ユーザーは、点数を見る。口コミを見る。写真を見る。メニューを見る。場所を見る。予約できるか確認する。

しかし、点数が高い店が、自分に合うとは限りません。有名店が、落ち着ける店とは限りません。観光客に人気の店が、地元の人にとって心地よい店とは限りません。レビュー数が多い店が、静かに過ごしたい人に向いているとは限りません。人が店を選ぶ基準は、点数だけではありません。

日本のSEO業者が進むべき方向

日本のSEO業者やWeb制作者は、単にAIツールを使うだけでは足りません。本当に重要なのは、AIを使って何を構造化するかです。中小企業の現場には、まだ言葉になっていない価値があります。社長の考え。店主のこだわり。スタッフの対応。常連客が通う理由。失敗しないための注意点。価格の理由。初めての人が不安に思うこと。地域で選ばれている背景。口コミに表れる顧客体験。

これらを聞き出し、整理し、ページに落とし込み、地図やSNSやFAQや事例とつなげる。これが、これからのSEO業者の仕事になります。つまり、SEO業者は、順位対策屋から、事業の編集者へ変わる必要があります。