第2章
第2章|Googleは何を排除してきたのか
Googleのアルゴリズム変更を、単なる技術アップデートとして見ると、少しわかりにくくなります。Panda、Penguin、Hummingbird、RankBrain、BERT、Helpful Content、E-E-A-T、AI O...
Googleのアルゴリズム変更を、単なる技術アップデートとして見ると、少しわかりにくくなります。Panda、Penguin、Hummingbird、RankBrain、BERT、Helpful Content、E-E-A-T、AI Overviews。名前だけを見ると、SEOに詳しくない人には難しく感じられるかもしれません。
しかし、これらのアップデートを一つの大きな流れとして見ると、Googleが何を目指してきたのかは、かなり明確になります。Googleは、検索結果から「役に立たないもの」を減らそうとしてきました。もっと言えば、Googleはずっと、検索者の判断を誤らせるものを排除しようとしてきたのです。
中身の薄いページ。不自然なリンク。検索順位を上げるためだけの記事。実体験のない説明。誰が書いたかわからない専門情報。広告収益だけを目的にした量産コンテンツ。過剰に最適化された、しかし人間には読みにくい文章。これらを減らし、本当に検索者の役に立つ情報へ近づけようとしてきた。この流れを理解すると、SEOの未来も見えやすくなります。なぜなら、AI検索やGEOも、この延長線上にあるからです。
Pandaが問うたもの
Pandaは、簡単に言えば、低品質なコンテンツを評価しにくくするためのアップデートでした。当時、米国ではコンテンツファームと呼ばれるビジネスモデルが広がっていました。検索されやすいテーマを大量に見つけ、安価に記事を作り、広告収益を得る。記事の目的は、読者の深い理解ではなく、検索流入を集めることでした。
健康、生活、金融、旅行、仕事、家庭、趣味。あらゆるテーマについて、検索キーワードをもとに記事が作られる。しかし、それを書いている人が本当にその分野の専門家であるとは限らない。実際に経験したわけでもない。責任を持って発信しているわけでもない。それでも検索上位に出れば、多くの人がその記事を読む。広告が表示される。収益が生まれる。
Pandaが問うた問題は、古い問題ではありません。AIで記事を大量に作れるようになった今、同じ問題が形を変えて戻ってきています。検索キーワードを入れる。それらしい見出しを作る。一般論を並べる。競合記事を参考にして、似た構成で作る。短時間で大量に公開する。一見すると、コンテンツは増えています。しかし、その中に本当の経験や独自性がなければ、読者にとっての価値は薄くなります。
Penguinが問うたもの
Penguinは、不自然なリンクやリンクスパムに対するアップデートでした。Googleは、リンクを評価することで検索品質を高めました。しかし、リンクが評価されるとわかると、人々はリンクを操作し始めました。リンクを買う。リンク集に登録する。自作自演のサイトを作る。サテライトサイトからリンクを送る。中身の薄いブログを大量に作る。アンカーテキストに狙ったキーワードを入れる。
ここでGoogleが問うたのは、「その評価は本物なのか」ということです。本当に他者から信頼されているのか。本当に参照される価値があるのか。それとも、信頼されているように見せかけているだけなのか。Penguinが排除しようとしたのは、不自然なリンクだけではありません。それは、信頼を偽装する行為でした。
Hummingbirdが変えた検索理解
Hummingbirdは、検索エンジンが単語だけではなく、意味や文脈をより理解しようとする流れの中で重要なアップデートでした。それ以前のSEOでは、どうしてもキーワード単位の発想が強くなりがちでした。しかし、人間の問いは、単語だけではできていません。
たとえば、「SEO対策 費用」と検索する人は、単に価格表を見たいだけではないかもしれません。この金額は妥当なのか。安すぎる業者は危ないのか。月額契約は必要なのか。成果が出るまでどのくらいかかるのか。中小企業でも払えるのか。制作会社とSEO会社のどちらに頼むべきなのか。検索語の背後には、複数の不安や判断材料があります。
Hummingbird以降、Googleはこうした検索意図や文脈をより理解する方向へ進んでいきました。これは、SEOの考え方を大きく変えます。単語を入れるだけでは足りない。検索者が何を知りたいのかを考える必要がある。その問いに対して、ページ全体で答える必要がある。関連する疑問にも先回りして答える必要がある。つまり、SEOは「キーワード最適化」から「意図への応答」へと進んでいったのです。
RankBrainとBERTが示したもの
RankBrainやBERTは、Googleが機械学習や自然言語理解を検索に深く取り入れていく流れの中で重要な存在です。本書で重要なのは、Googleが「人間の言葉をより人間らしく理解しようとしてきた」ということです。
検索者は、いつも正確なキーワードで検索するわけではありません。あいまいな言葉で検索します。話し言葉で検索します。悩みの断片で検索します。専門用語を知らずに検索します。自分でも何を探しているのか、完全には整理できていない状態で検索します。「静かなカフェ ひとり」「子連れ 歯医者 優しい」「美容室 緊張しない」「整体 初めて 怖い」。これらは単なるキーワードではありません。感情を含んだ検索です。
日本で起きたWELQ問題
日本でGoogleの品質評価を考えるうえで、避けて通れない出来事があります。WELQ問題です。WELQは、医療・健康情報を扱うキュレーションメディアでした。しかし、専門性や信頼性に疑問のある記事が大量に公開され、社会的な批判を受けました。
誰が書いているのか。専門家が監修しているのか。責任の所在はどこにあるのか。検索上位に出ているからといって、信頼してよいのか。広告収益やメディア運営の都合が、情報の品質より優先されていないか。WELQ問題は、単なる一メディアの問題ではありませんでした。それは、検索流入を目的としたコンテンツ量産モデルの限界を示す出来事でした。
Helpful ContentとE-E-A-T
Helpful Contentという言葉は、Googleの方向性を非常によく表しています。検索エンジンのためではなく、人間のために作られた有用なコンテンツ。その記事は、読者の役に立つのか。その会社だから書ける内容があるのか。実体験や一次情報があるのか。読み終わった人の判断が前に進むのか。他の記事と同じことを言っているだけではないか。
E-E-A-Tとは、Experience、Expertise、Authoritativeness、Trustworthiness。経験、専門性、権威性、信頼性です。その情報は、経験に基づいているのか。その人や会社には、本当に専門性があるのか。外部から見ても信頼できるのか。読者が重要な判断をしてもよいだけの根拠があるのか。E-E-A-Tとは、飾りではありません。それは、「この情報を信じてよい理由」をWeb上に表現することです。そしてGEO時代には、この信頼の根拠が、AIにも読まれるようになります。
Google Mapsと口コミにも同じ流れがある
Googleが排除してきたものは、通常の検索結果だけに限りません。地図や口コミの世界にも、同じ流れがあります。Google Mapsは、今や多くの人にとって生活インフラです。近くの飲食店を探す。歯科医院を探す。美容室を探す。観光地でカフェを探す。営業時間を確認する。口コミを見る。写真を見る。混雑状況を見る。経路を調べる。
地図上でも「ごまかし」と「本質」の戦いは起きています。不自然な口コミ。実態と違う写真。古い営業時間。誇張された説明文。実際のサービス内容と一致しないカテゴリ。口コミへの返信がない。低評価への対応が見えない。一方で、本当に良い店舗は、口コミの中に具体的な言葉が残ります。「説明が丁寧だった」「子どもに優しかった」「静かに過ごせた」「駐車場が使いやすかった」「初めてでも緊張しなかった」。こうした言葉は、これからAIにとって非常に重要な材料になります。
Googleが排除してきたものの正体
ここまで見てくると、Googleが排除してきたものの正体が見えてきます。それは、単に「低品質なページ」ではありません。Googleが排除しようとしてきたのは、検索者の判断を誤らせるものです。価値があるように見せるページ。信頼されているように見せるリンク。専門的に見えるが責任のない記事。読者のためではなく検索順位のために作られたコンテンツ。体験がないのに体験があるように見せる文章。人気があるように見せる口コミ。実体より大きく見せるための情報設計。
つまり、Googleは「見せかけ」を排除しようとしてきたのです。そしてAI検索の時代には、この流れがさらに広がります。